連載コラム “営みの重なり”


まちの魅力は人々の営みが重なって立ち現れるところにある。写真はイタリアのヴェッキオ橋である。石造りの橋は1345年のもので、その上に回廊や商店が増築されている。歴史的にも、構造的にも、用途的にも重なりがある。その結果として独特の形をしており、人々を魅了する場所となっている。このような構造をヒントに、重なりの魅力を持った建築をつくりたい。

 

ヴェッキオ橋を構成する要素は、橋、回廊、商店の3つである。それぞれが自然、都市、人間といった異なる目的やスケールに応じている。橋は土木建築物として川を渡るため、回廊は宮殿同士を結ぶ通路の役割があり、商店部分は宝飾店が並んでいて人々の経済活動と密接である。

 

形を観察していくと、橋や回廊は対称性をもって反復した造形で、商店は家の集合のようなバラエティに富んだ造形をしている。継承しながら、変化を受け入れて重なりあった姿は魅力的だ。大きな土台に積層するあり方、異なる機能や様式、現代の人々による使い方の多様性、思い切って手を加えられていること、静寂とにぎわいの共存。大きな秩序がありながら、ヒューマンスケールの小さなふるまいにも対応している。営みが形になって重なること、逆に今ある形に営みが重なっていくこと、両側面から考えることで、生きる喜びにつながる居場所のヒントが見つかるのではないだろうか。

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